• クトゥブさんの造ったミナール(minar)はイスラム教の尖塔(minaret)でインド・デリーの中心部から10km南へ行った郊外にあります。1993年に世界遺産に認定された尖塔は赤砂岩で造られ本当に赤いです。クトゥブさんとはクトゥブディ−ン・アイバクで元々アフガニスタンの奴隷軍人出身でインドで最初のイスラム王朝、デリー・サルタナット王朝をおこしました。アイバクはこの尖塔の建築を命じ1199年に完成しています。イスラム教のミナレットは元々祈りの時を知らせるものですが、彼はこの尖塔を勝利記念に建てさせています。この塔はイスラム教が初めてインドに侵攻してきた象徴となっています。現在インドのイスラム教徒は11％で、ヒンドゥー教徒の83％と比べると少ないのですが、ヒンドゥー以外では最大となっています。

• 5層からなる尖塔は、高さ72.5m、一番下の直径15m、頂上直径3mの巨大なものです。内部に379段の螺旋階段があり1970年代前半には頂上まで登れたのですが、墜落事故が相次いだので2階までしか許されなくなりました。そして1980年代に小学生が押し寄せるようになり全面禁止となりました。赤砂岩で造られているのは３層までで、縦につけられたヒダは最下層が円と角を交互に、二番目の層は円、３番目の層が角のヒダになっています。塔の周りには装飾が施され、刻まれているのはコーランから引用されたものだそうです。4〜5層は大理石で造られています。

• ミナールを横に行くとドーム状の建物があり、アライ・ダルワーザと呼ばれモスクへの門となっています。これも赤砂岩を基本に造られ、ところどころに大理石がはめ込まれています。この頃の天井のドームは石を少しずつはみ出しながら造っていく工法で造られているため無理があり大きいものは壊れ小さなドームしか残っていないそうです。
• 尖塔の横にある礼拝所のモスクはインドで最初のモスクです。アイバクは周辺のヒンドゥー寺院を破壊し、その石をモスクの建材に流用したといいます。本来イスラム教では偶像崇拝は禁止されており、装飾は草花などを細工した模様ですが、ヒンドゥー寺院の石材を流用しているためところどころにヒンドゥー女神像などが彫られたままになっています。

• モスクに、有名な鋼鉄の柱が立っています。柱のサンスクリット語から375年から413年まで続いたグプタ朝を記念して作られたものとなっています。これは純度の高い鉄で出来ているため1500年を経過する今でも錆びていません。頂点には穴があいており、そこには、ヒンズー教のビシュヌ神が乗ったと言われるガルーダの彫像があったと考えられています。現在は囲いがあり出来ませんが、柱に背をあて後ろ手に手をあわせることができれば幸運がもたらされると信じられています。

• モスクはアイバクの後継者たちによって２回拡張されています。一回目は、右図緑の拡張で、1211年に後継者イレトゥミシュによって行われ、列柱と拝殿を付け加え面積が3倍以上になっています。二回目は1295〜1315年にアラー・アッディーンによって行われ最初のモスクの10倍になっています。赤砂岩の巨大な円形の土台が残っていますが、大きくなったモスクにつりあう倍の高さの塔を建てようと試みましたが途中アッディーンは暗殺されミナレットは未完成のままです。

• 右の地図で、1=クトゥブ・ミナール 2=未完のアライ・ミナール 3=錆びない鉄柱 4=クトゥブ・モスク 5=イレトゥミシュの墓 6=アッディーンのイスラム神学校蹟 7=アライ・ダルワーザ 8=イマムザーミンの墓

• 開園時間　9:00〜5:00　入場料：インド人 10ルピー = 30円、外国人 5ドル。

• 出展：世界遺産インド編報告書、神谷武夫とインドの建築、英語ですが情報が充実している「Delhigate.com」。

72m尖塔はインド到達の象徴	赤砂岩の尖塔は本当に赤い	植物をあしらった模様の彫刻	以前はこの入口から登れていた
モスクへの入口となる赤砂岩と大理石のアライ・ダルワーザ		丸いドーム天井も赤砂岩	ドームより外を望む
ドームを出ると広大な芝生	拝殿蹟のアーチ状入口	4世紀の純鉄製錆びない柱	クトゥブ・モスク
モスクは1192年から6年かけて建設。建物比から尖塔の大きさが分かる
近くのヒンドゥー寺院解体、建材をそのまま流用の為イスラム教禁止の女神像など柱に残る			廃墟風の建造物も残る
アライ・ミナール 敷地に見合う大きさの塔を造ろうとして未完		赤いミナール(尖塔)とモスク	さようなら ミナール

2002/11/01